第二回新潟医療福祉学会学術集会
患者・障害者・家族等の立場から
シンポジストとして佐々木副支部長が発表

「保健医療福祉の連携〜地域リハビリテーションにおけるチームアプローチ」


平成14年11月30日(土)新潟医療福祉大学で第二回新潟医療福祉学会学術集会が開かれ、
そのシンポジウムで佐々木副支部長が
「患者・障害者・家族等の立場から」と題して発表しました。
同学会は開講二年目の新潟医療福祉大学と新潟リハビリテーション病院の教職員関連職種の方々で構成されています。
学術集会は学会の勉強会で100人ほどの会員と数十名の学生が参加していました。
今年の主テーマは「保健医療福祉関係者の相互理解と連携」でした。
秋の呼吸リハビリ講習会で大変お世話になった小林量作先生が同集会事務局長だった関係で
支部にお話が来たものです。

患者・障害者・家族の立場から

日本ALS協会新潟県支部副支部長 佐々木徳武


 私は亀田町に住んでいる佐々木と申します。皆さんはALSという病気をご存じですか。日本語では、筋萎縮性側索硬化症といいます。病気の原因が不明で、治療法もなく、徐々に筋肉の力が衰えていきます。3年から4年くらいで、人口呼吸器の助けをかりないと自力で呼吸できなくなる病気です。しかし、脳細胞はおかされないので、意識や知的にはしっかりしているので、自分の病気の進行をみつめなければなりません。そのため「難病中の難病」ともいわれています。全国で約6000人の患者がいると推定されています。この病気のことを知識としては知っていても、実際の状態を観てみないと、その大変さがわからないと思います。
 今日は、@私自身のALS闘病について、A日本ALS協会という患者の会について、B在宅療養で必要なことについて、の3点についてお話しします。

1.私自身のALS闘病
1)私は58歳になります。この病気は、今から17-18年前に足の不自由から始まり、10年前に大学病院でALSと告知されました。ただ、幸いなことに、私の場合は進行がゆっくりです。それでも年単位で少しずつ力が衰えているのがわかります。現在は、腰や足の方が不自由で歩くことができません。長時間座っていると疲れやすいです。
2)私のリハビリ
 私がリハビリを受けるまでは、いくつかの気持ちの変化がありました。大学の主治医の先生から聞いた話で、同じ難病のご兄弟で、一方はリハビリに精を出し、もう一方はなにもしないで療養していたら、リハビリをしていた方が、進行が明らかに遅い、という話を聞き、「リハビリしないより、していた方がいいのかな」と思いました。
 まだ、その時は自分の病気の重大さを理解してない状態でしたが、段々と体の不自由が増すにしたがって、やはり後悔しない為にも、リハビリをしようと思いました。
 しかし、自分なりに自宅でリハビリをしても、中々身が入るものではありません。また、毎日の生活でリハビリを継続することは、本人にはとても苦痛で大変なことです。リハビリを少しでもやりすぎるとリバウンドで、あちこちが痛くなります。運動の適量が難しいと、思います。
私は大学病院、市民病院、町の病院、整骨院等とリハビリのはしごをいくつもしました。最近の3年位でやっと、自分の体のことを良く理解して下さる先生にめぐり合い、通所リハビリを週2.5回、訪問リハビリを週1回、訪間看護を週1回、合計で週4.5回位のリハビリを受けています。ここまで来ると自分にとっては、たとえ動けない体になったとしても、リハビリのない療養生活は考えられないと、今は思っています。たとえ回復の為のリハビリでなくても、現状維持が少しでもなされることが、私の一番のリハビリだと思っています。
また、運動をすると、体が軽くなり、気分が明るくなり、余計なことを考えなくてもよい、ようになります。

2.日本ALS協会という患者の会について
 日本ALS協会は、昭和61年・1986年に発足し、筋萎縮性側索硬化症の患者・家族を支援する非営利団体です。本部事務局以外に現在31の都道府県支部を持っています。この中でも新潟県支部は全国で2番目に設立され、今年で16年目になります。
1)患者会活動
 ALS協会は、約8000人の会員を要し、機関誌「JALSA」を年4回、各9000部発行しています。
今年度の主な活動として、@ヘルパーの吸引問題の解決に向けて署名運動を実施、約178000の署名を集め、先日1112日厚生労働大臣に直接陳情し、「来年春には決着を付けたいという前向きな言葉をいただきました。陳情には私も参加してきました。AALS等神経難病患者の療養環境の改善・整備、神経難病の原因究明、治療法の開発促進を国に働き掛ける、Bみなさんからご援助いただいている「ALS基金」を活用して機器の購入や研究の助成を行っています。また、ホームページでも積極的に情報発信しています。新潟県支部でも、本部事務局に負けないホームページを立ち上げています。みなさんもぜひ、一度ご覧ください。
2)人工呼吸器の選択について
 これはとても大きな問題です。呼吸器をつけるか、つけないかの選択は一言では申せません。すごく悩みますし、若い人と、年をとった人、家庭の事情などで、皆さん異なる条件を持っています。付けるまで大変悩みます。経済的な問題、介護の問題、緊急時の問題、夜間大丈夫だろうかなど、考えるときりがありません。そんなこともあり、私は6年前に呼吸器をつける以前の患者さんの集いを下越地区で立ち上げました。現在、年1回集まっています。そこで、悩み事を話すことにしています。このような問題は、患者同士だけでは対応できないので、地域の保健所さんにリーダーシップをとっていただきいています。呼吸器以外にも沢山の悩みを抱えています。地域で支援できるシステムが確立できたら良いなと思っています。
3)ボランティアとの関係
 ボランティアの方々には本当に助けていただいています。ただ、最近2つのことを考えています。1つは、ボランティアの出入りがあるので、慣れるのに時間がかかると言うことです。同じ人が来てくださるといいなと思います。もう1つは、ボランティアを受ける人も、ボランティアを行う人も5分と5分と考えたいのです。ボランティアを受ける人は、援助していただいて助かりますし、ボランティアを行う人は、そのことによって得るものが沢山あると思うのです。よく「対等の関係」といいます。そこまで思えるようになるには、時間がかかりますが、最近、ボランティアへの感謝の気持ちは変わらないとともに、「対等の関係」ということについて考えるようになりました。

3.在宅療養で必要なことについて

1)    
専門職による理解
 医師をはじめとして、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、ヘルパーなど専門職の方々のこの病気にたいする理解をお願いしたいです。病気に対する不安や家族も大変だと言うことを知っていただきたいのです。2)コミュニケーション機器の必要性
2)コミュニケーション機器の必要性
 だんだん病気が進んできますと、最後はコミュニケーション機器が必要になります。これは呼吸器と異なり、どの人も求めるものなのです。専門職の方々は、パソコンの知識や新しいソフトのこと、スイッチの工夫などで指導して頂きたいのです。

3)通所介護・通所リハビリの普及
 地域に呼吸器を着けていても受け入れてくれるデイサービスや短期入所など、他の高齢者と変わらないサービスが受けられる様になることが望みです。
4)介護者の介護負担
 最後に、介護者のことについて話します。呼吸器を付けていますと吸引という大変な介護負担がかかります。1時間に4回も、5回も吸引することはまれではありません。夜間に1時間毎に吸引したら介護をどれくらいの期間介護を続けられるでしょうか? しかし難病患者の長期入院を拒否されることがあります。介護者の負担は、このような吸引をしながら、一般的な介護、家事などやることが沢山あります。介護者が倒れたら私たちは、入院しかありません。介護者の負担を、軽くする方法はないでしょうか。高齢者とは別枠の福祉行政が絶対に必要です。そして、私たちは障害者の道を好んで選んだわけではありません。自然界において動物でも、植物でもみんな均一に育ったり芽が出たりすることはありません。先日テレビで見ました、どこか外国の土地で海と川の境界地域で生えている植物ですが、たしかマングロープと言ったかもしれませんが、その木の葉っぱの中に黄色になって沢山落ちる葉があるのです。その葉の成分は、落ちない葉に比べてとても塩分が多いのだそうです。その落ちる葉のおかげで、木は塩水で枯れることなく青々と繁るのです。
 あぁ、私たち障害者は、この黄色くなって落ちる葉っぱと同じ役割を果たしているのだと思いました。人間もこの宇宙自然界の法則をまぬがれることができないので、このような考えから先ほど述べましたボランティアとの対等な関係という意義がご理解願えるかと思っています。
 最後に私の拙ない話を聞いていただいたことに大変感謝申し上げます。


佐々木さんの移動:
移乗ボードで自動車用車椅子に乗り移ります。
白井さんの車へ吸い込まれ、車椅子は後ろへ積みます。