ヘルパー吸引問題 検討委員会レポート (第5回) (33月26日10〜12時厚労省18階22会議室) |
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←パソコンを使って、自動吸引機の説明がありました。 終わってからロビーでミニ集会をしました。→ |
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* | 傍聴記 第5回目の検討委員会が開かれた三月末の東京はポカポカと汗ばみそうな春の陽気。 桜の咲く頃はもうすぐですが、残念ながら今年度中に結論は出ませんでした。10時から始まって、4種類の資料説明が終わったのが11時10分過ぎ。福永委員の3分足らずの説明を除いては全部厚労省と看護職による説明でした。残り50分足らずの中で8人の委員による資料への質疑応答、意見陳述では期限内に「意を尽くした審議」が行われるのは難しかろうと感じました。 それぞれの立場としては、次のように捉えました。座長は「在宅医療の充実を図るという視点で考え拙速は避けたい」お考え。川村委員は「神経学会が安全だと言える根拠は何か」と詰問。山崎委員は「今あるものを国がちゃんと使って家族支援ができないのか。緊急避難的考えは論点を外すもの」と看護側は基本路線。「意見書」に代表される神経学会メンバーである福永委員や「医療と介護の両立と連携で支えよう」と述べる五阿弥委員は患者会には分かりやすい立場。「緊急避難でなく、医師、看護師、ヘルパー職の責任を明確に」と言う平林委員や、「手近で済ませて医療のアクセスを阻害しないように。吸引を家族が許されるならその法的な根拠を明確にして欲しい」と注意を喚起する星委員等の立場も貴重なものです。最後に座長は「どうすれば患者会が納得のいく結論が出せるか考えたい」との意をもって締めましたが、待ちかねている現場としては、今までの経緯に対するコメントを作成発表する予定です。 資料は45頁。国療高松病院での退院指導マニュアル。「痰の自動吸引装置」のパソコンに寄る紹介。看護支援モデルの紹介。そして最後の一枚が日本神経学会による意見書で、直接「ホームヘルパーの吸引」に触れているのはこれだけでした。患者会にとっては誠に心強い建議ですので末尾掲載資料をご覧下さい。 今回も東京支部金沢事務局長が徹夜で速報していますので、内容報告はそれを転載させて頂きます。(若林記) |
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分科会金沢レポート | |||||||||
1.第5回分科会の議事概要 日時、場所: 3月26日 10時〜12時 厚生労働省会議室 議事:@在宅ALS患者対策の現状と課題について Aたんの吸引の医学的整理 Bその他 約1時間15分、4つの資料説明が関係者より行われた。 (1)「在宅オリエンテーションマニュアル」・「在宅療養技術 指導マニュアル」(国立療養所高松病院) *医事課よりALS呼吸器装着患者が在宅移行に当たっての 病院のマニュアルを紹介。委員より「何時から運用してい るのか」「衛生材料の病院からの供給はどうなっているか」 「マニュアルを患者・家族はどう評価しているか」等の質問 があったが、「次回に報告」となった。 (2-1)「人工呼吸器装着者等医療依存度の高い長期療養者への24時間 在宅支援システムに関する研究」(看護協会調査追加集計結果) *山崎委員(日本看護協会常任理事)より、回答訪問看護ステ ーションでの呼吸器利用者468名、有効回収率30.7%推定訪問 看護S利用呼吸器患者数2,524名。 24時間対応を可能にするための条件:@訪問看護Sの課題 (職員の増員、看護師の資質向上)A医療環境B機器業者。 提供サービス:@吸引A本人・家族への指導B排痰ケア。 利用者本人・家族のサービス:@日中の長時間訪問看護サービス Aレスパイトのための入院 (2-2)「人工呼吸器装着等医療依存度の高い長期療養者への24時間 在宅支援システムに関する研究 −「痰の自動吸引装置」の臨床的評価研究(中間報告) *訪問看護振興財団の佐藤氏より、平成13年に日本ALS協会 の「ALS基金」で山本氏(大分協和病院)徳永氏(徳永装器 研究所)により開発研究を開始された「痰の自動吸引装置」 の追加研究@性能改善A吸引カテーテルの留意位置の安定化 BALS患者への臨床テストの中間報告がされた。 当初より、@新しい圧力センサーを採用し、(センサーを吸 引器チューブのみから呼吸器気道にも追加)Aカテーテルの 位置をカニューレ先端位置に合わせるB24時間病院内で2名 の患者に対しテスト結果:患者本人の呼吸困難はなく、痰も 有効に除去され、実用化の見通しをえることができた。 質問として実用化の見通しについては「数年」、適用範囲 は「今後の臨床テストの中で」との報告があった。 (3)「ALS療養者の看護支援モデルに関する検討(中間報告) ALS患者の看護支援モデルに関する検討会(新道幸恵) 看護協会の山崎委員より、青森県保健大学での研究事例報告。 呼吸管理看護支援モデル(トータルアセスメント、スクイー ジング、胸骨部の温罨法、体位交換による痰のドレナージ、 口腔・気道の吸引、ケア成果の確認)を実施できる看護師を育 成するために教育訓練プログラムを開発・実施。 合計15名(ナースセンター看護師3名特別介護人5名、訪問看 護師4名、その他3名)が参加し、在宅ALS呼吸器患者(3名) に週3回、約1時間、介入看護を行った。 介入看護により「痰の喀出が促され、患者の良好な呼吸状態が続 き、表情がいきいきとなり、夜間の吸引回数も減少」との結果が 得られた。呼吸管理については訪問看護師がキーパーソンとなり 医療、福祉関係者、機器会社をマネジメントすることが望ましい。 (4)「ホームヘルパーの吸引可否に関する日本神経学会の意見」 日本神経学会 理事長 金澤一郎 福永委員(国立療養所南九州病院長)より意見書の説明 [意見書要旨] 「新潟地区会員および本学会理事・東大医学部神経内科辻省次教授か らの発案によりホームヘルパーの吸引行為について学会内で議論し た。これらの行為は医師・看護師の行うとされているが、現状は医 療機関で指導を受けた家族・ボランテアが訪問看護師と共に行って いる。 むしろ、訪問看護師は比較的短い時間しか現場にいることができな い状況から、夜間を含めて多くの時間帯を家族やボランテアの人達 が介護を担っている。この状況は仮に看護師を増員したとしても、 家族やボランテアにかかる負担の大幅な軽減は困難と推量する。 吸引行為に起こりうる危険については、適切な指導を受けておれば 特例療養者(出血傾向や狭窄のある方)を除き、特別の医学知識・ 技術がない非医療関係者でも安全にできると考える。」 「本学会として次の建議をしたい。@在宅療養者の看護に際し、適切 な指導を受けたホームヘルパーは、担当する療養者に限り、吸引を行 うことができる。A吸引を行うヘルパーは変化・異常・不審点などに つき、適時看護師、主治医に報告、その指導を受ける。」 *川村委員(都立保健科学大学保健科学部看護学科教授)より「ヘルパー が吸引して安全という根拠が示されていない」 「学会内で議論したというが他の職種の方が看護に介入することに懸念 がある」という意見が出され 福永委員より「どこをもって安全とするか、ヘルパーしかいない時 痰がつまり、吸引ができない危険の方が高い。学会として全体として 安全と考えている」等のやりとりがされた。 2.資料に対する質疑後、約40分、以下の意見がだされた。 @全体の進め方について確認したい。この場は学会でもないので、いつまで も議論してもしょうがない。(福永委員) *前田座長(都立大学法学部教授)より「在宅医療の充実や自動吸引装置の 開発、青森のモデル研究もすばらしい。全国に広げられるとよい。ただ、 技術論まで論議はしない。 それらを踏まえて、現実に困っている患者・家族に対してどうするかを 検討することが必要。日本神経学会の建議も重いものがある。ヘルパーの 吸引を認めるのかどうか、どういう条件ならば許せるのか検討したい。 *医事課より「大臣の言われた”桜の咲くころ”になったが大事なことは 論議を深めること」 A青森の事例で看護師のエキスパートがやると良い効果がでるなど、訪問 看護の充実は必要と考えるが、全部看護師でカバーできないことも事実 であろう。家族でもよいことがあるのでは。訪問看護の充実と条件付きで ヘルパーの吸引を認めていくべきだ。(五阿弥委員:読売新聞論説委員) B青森のモデルのようにやればヘルパーによる吸引がいらないエリア、患者 がででくるのではないかと思う。 国療高松病院マニュアルには不備がある。厚生労働省はチャンと指導でき いないのではないか。難病拠点病院での退院時調整会議が不十分になって いる。療養ネットワークをどのように埋めていくのか。 800〜2500名のALS在宅呼吸器患者を埋めることができないのか 検討しないと、ヘルパーの吸引は言えない。専門看護師を付けてよい。 家族の支援をどうするか。自動吸引装置の開発は評価できる。今あるもの でどこまでやれるのかだすべき。(山崎委員) C大掃除に対するアクセスを阻害してはならない。青森の事例(A)では近い ことはやっていたが、肺機能は落ちていた。簡単になることで大掃除が できなくなることが心配。家族の日常的行為の中でそのようなアセスメン トが必要で、その延長線上にヘルパーができることがある。 (星委員:医師会常任理事) D星委員の意見に基本的賛成。患者の状態によって 異なる。責任は基本的に医師にあると思うが、どう考えるのかが必要。 国療高松病院マニュアルでは医師の指導的役割が見えない。 医師、看護師の役割分担、その延長線上にヘルパーがある。 緊急避難の検討でなく、制度の議論をする必要があり、そうでなければ 議論が混乱する。(平林委員:国学院大学法学部教授) E青森モデルの訪問看護師のスペシャリストを現在の制度上にどのように 乗せようと考えているのか。また、特定の条件での吸引事例が寄せられ ている。次回事務局と相談して提出したい。 (伊藤委員:東北大学大学院医学系研究科講師) *都道府県での研修や診療報酬等を今考えているところ(山崎委員) *次回提出願う(前田座長) Fご家族が医行為をしていて何故、法律にふれないのか、ヘルパーの医行 為との関係で検討が必要。(星委員) G医療だけ、看護だけの議論はどうかと思う。連携ができていない。 前回も述べたが尾道の事例等、トータルで支えられることが必要。 (五阿弥委員) 3.前田座長のまとめ ポイントは今ある社会資源を使えば、ヘルパーの吸引は必要ないのかを 明らかにし、患者団体が納得できるものが必要。 事務局で現状の資源でどこまでできるのか資料を出して欲しい。 医師と看護師のどちらがキーパーソンか、安全等の議論もあるが、日々困っ ている患者・家族を考えれば、自動吸引装置の完成を待って結論を出せない。 4.次回分科会 設定できておらず、後日調整して連絡する。(医事課事務局) 以上 |
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資料 | |||||||||
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日本神経学会意見書 | |||||||||
資料4 筋萎縮性側索硬化症などのいわゆる神経難病患者や高齢者の診療・介護指導について、神経内科医の関心は高く、本学会内でしばしば意見交換が行われ、本学会診療向上委員会でもとりあげられ、学会としてもより一層の努力をする所存です。 この度、本学会の新潟地区会員および本学会理事・東京大学医学部神経内科辻省次教授からの発案で、ホームヘルパーの吸引行為について学会内で議論をいたしました。現状では、これらの行為は医師・看護師が行うとされておりますが、実情は当該患者さんの医療を担当をする医療機関で指導をうけた家族・ボランテイアが、訪問看護師とともに行っております。むしろ、訪問看護師は比較的短い一定時間しか現場にいることができない状況から、夜間を含めて多く の時間帯を家族やボランテイアの人たちが介護を担っていると認識しております。この状況は、仮に看護師を増員したとしても、それでも家族やボランテイアにかかる負担の大幅な軽減は困難と推量する次第です。
以 上 |