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当日配付資料(*印) |
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看護師等によるA L S患者の在宅療養支援
に関する分科会(第6回)
資 料 目 次
資料1 家族が行う「たんの吸引」に関する整理
*○ 刑罰関連規定の適用について
*○ 実質的違法論について
*○ 家族が行う医療行為について
*○ 家族が行う「たんの吸引」に関する違法性阻却の考え方
○ 家族が行う「たんの吸引」の手段の相当性について
資料2 気管切開している患者のrたんの吸引」の種類別の
危害の内容について(事務局試案)
*資料3 これまでの議論の整理
*資料4 山崎委員提出資料
*資料5 ヘルパー等介護者による疾の吸引検討に関する意
見・要望書」(平成15年4月4日、日本ALS協会ほか)
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資料1↓
家族が行う「たんの吸引」に関する整理
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刑罰関連規定の適用について
1.医師法第17条について。
○医業を医師に独占させ、一般人に対してこれを禁止することを規定したもの。本条の規定に違反し無免許で医業をなした者に対する罰則は、2年以下の懲役又は100万円以下の劃金
○医業とは、@ 当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぽレ又は及ぽすおそれのある行為(医行為)を、A反復継続し、またはその意思をもって行うこと(「業として行うこと」)。【医師法第17条違反の“構成要件”】
2. 刑法が適用される手順について
※ 学説による差異を捨象したイメージ図(省略)
(1)構成要件
犯罪定型として法律に規定された違法・有責な行為の定型。
これを充足する違法・有責な行為が犯罪ということになる。
※構成要件該当性:構成要件に該当すること。構成要件に該当する行為が違法性、有責性の判断を受ける。
(2)違法性阻却事由
刑法上、構成要件に該当し、違法と推定される行為について、特別の事由のため、違法性の推定を破る事由。違法阻却原因ともいう。刑法は、正当防衛・緊急避難・正当行為の3つを明記する(第35条 〜第37条)が、このほかにも法秩序全体の精神からみて違法性の阻却が認められるとの見解も有カである。
(3)責任能カ
刑事責任を負担し得る能カ。
※ 責任阻却事由:責任の成立を妨げる事由のこと。責任無能カ・錯誤及び期待可能性の欠如がこれに当たる。
出典:「法律用語辞典」内閻法制局法令用語研究会編、有斐閣 1993
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実質的違法論について
1.基本的な考え方
○ ある行為が処罰に値するだけの法益侵害がある(構成要件に該当する)揚合に、その行為が正当化されるだけの事情が存在するか否かの判断を実質的に行い、正当化されるときには、違法性が阻却されるという者え方
○ 形式的に法律に定められている違法性阻却事由を超えて、条文の直接の根拠なしに実笛的違法性阻却を認める
○ 具体的には、生じた法益侵害を上回るだけの利益を当該行為が担っているか否かを判別する作業を行うこととなる
※ r当該行為の具体的状況その他諸般の事情を者慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否か」(最判昭50・8:27刑集29・7442他)
2.正当化されるための要件
(1)目的の正当性
○ 行為者の心I庸・動機そのものを問題にするのではなく、「行為が客観的な価値を担っている」という意味で解すべき
(2)手段の相当性
○ 最も重要な要件
○ 具体的事情を基に「どの程度の行為まで許容されるか」を検討
○ 犯罪類型ごと、事案の類型ごとに、rこのような目的のたゆには・この程度の行為まで正当化される」という類型的基準を設定すること
(3)法益衡量
○ 特定の行為による法益侵害と、その行為を行うこζにより淳成されることとなる法益(その行為を行わないことによる法益侵害)とを、比較衡量○ 「手段の椙当性」の判断の過程で、合わせて行われることと写る
(4)法益侵害の相対的軽微性
○ 特定の行為による法益侵害が椙対的に軽微であること
○ その行為による法益侵害の程度が大きければ、正当防衛や緊急避難といった違法性阻却事由に該当することが求められる
(=補充性など、さらに要件が付加される)
(5)必要性・累急性
○ 法益侵害の程度に応じた必要性・緊急性が存征するか否かを検討
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家族が行う医療行為について
1,関係通知について
家族が行う医療行為に関連しては、インシュリンの自己注射につし、て、以下の通りの解釈を示している。
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○ インシュリンの自己注射について
昭和五十六年五月二十一目医事第三十八号
各都道府県衛生主管部(局)長あて
厚生省医務局医事課長通知
標記について、別紙一により国立小児病院長から照会があり、これに対し別紙二のとおり回答した ので、関係方面への周知徹底について、よろしくお取り計らい願いたい。
・・・・・・・・・・
昭和五十六年四月二十五日国小児発第一七十四号
厚労省医務局医事課長あて国立小児病院長照会
糖尿病患者のうちには、毎日インシュリンの注射をしつづけなければならない者がおり、注射をしていれば、通常の社会生活ができるが、注射を中断すれば生命に係る大きな危険があります。しかし、その為に毎日医療機関に通院しなければならないことは、患者にとって大きな支障となっております。
そこで、インシュリンの自己注射が考え出され、欧米諸国では常識化されており、我が国でも普 及しています。しかし、担当する医師の中にはインシュリン自己注射が医師法第十七一条違反にならないかどうかに不安をもつ者もあるので、左記について医務局の見解を伺います。
記
医師が継続的なインシュリン注射を必要と判断する糖尿病、、患者に対し、十分な患者教育および 家族教育を行った上で、適切な指導及び管理のもとに患者自身(又は家族)に指示して、インシュリン の自己注射をしても医師法第十七条違反とはならないと考えるがどうか。
別紙二
昭和五十六年五月二十一日医事第三十八号
国立小児病院長あて厚生省医務局医事課長回答
昭和五十六年四月二十五日付け国小児発第一七四号をもって照会のあった表記については、貴見のとおりである。
(*原資料枠付き縦書き)
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2.この通知の考え方
(1)「インシュリンの自己注射」という行為に対する評価
インシュリン注射は、医行為に該当し、これを反復継続すれば医師法違反となること
(2)違法とされない者え方
@ 目的の正当性
○ 患者の治療目的のために行うものであること
A手段の相当性
○ 医師が、継続的なインシュリン注射を必要と判断する糖尿病患者に対し、十分な患者教育及び家族教育を行った上で、適切な指導及び管理の下に行われるものであること
B法益衡量
○ 椙当な手段により行われた法益侵害と、患者が注射のために毎日医療機関に通院しなけれぱならない負担の解消とを比較衡量
C法益侵害の椙苅的軽微性
○ 侵襲性が比較的低い行為であること
○ 行為者は、患者との劃こおいてr古族」という特別な関係、自然的、所与的、原則として解消されない関係にある者に限られていること(公衆衛生の向上・増進を目的とする医師法の
目的に照らして、法益侵害は相対的に軽微であること)
D必要性・緊急性
○ 医師が、インシュリン注射を必要とすることを判断していること
○ 患者が注射のために毎日医療機関に通院しなければならなし1負担を軽減する必要性が認められること
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1 「家族と医療 その法学的者察」唄孝一・石川稔編、弘文堂、1995
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家族が行う・たんの吸引・に関する違法性阻却の考え方
家族が行う「たんの吸引」について、当該行為の違法性が阻却される揚合の要件としては、下記のようなことが考えられるのではないか。(家族が行うことについて患者が同意していることが前提)
@ 目的の正当性
○患者の療養目的のために行うものであること
A 手段の正当性
○次のような条件の下で、「たんの吸引」を実施
・医師・看護師による患者の病状の把握
・医師・看護師仁よる療養環境の管理
・「たんの吸引」に関する家族への教育
・適性な「たんの吸引」の実施と医師・看護師による確認
・緊急時の連絡・支援体制の確保 .
B法益衡量
○「たんの吸引」が家族により行われた揚合の法益侵害と・在宅療養を行うことによる患者の日常生活の質の向上を比較衡量
C法益侵害の相対的軽微性
○侵襲性が比較的低い行為であること。
○ 行為者は、患者との間において「家族」という1寺別な関係(自然的・所与的、原則として解消されない)にある者に限られていること(公衆衛生の向上.増進を目的とする医師法の目的に照らして・法益侵害は相対的に軽微であること)
D必要性・緊急性
○ 早急に「たんの吸引」を行わなければならない状況が不定期に訪れるが、医療資格者がすべてに対応することが困難な現状にあり、「たんの吸引」を家族が行う必要性が認められること
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資料3↓
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これまでの議論の整理
1.在宅ALS患者の療養環境の向上を図るための措置について
(1)在宅療養サービスの質の向上のための方策
@訪問看護サービスの充実
○訪問看護サービスの充実を図る施策を展開すべきではないか
A医療サービスの質的向上
○在宅療養患者を支える医師に対して、疾患に関する専門知識等に関する情報提供等が必要ではないか。
○訪問看護師や潜在看護師に対する研修等訪問看護サービスを担うべき看護師の質を高めるための施策を講ずるべきではないか。
B医療サービスと福祉サービスの適切な連携確保
○医療と福祉の連携を図り、在宅療養患龍支援すべきではないか。
○退院前指導等を活用して連携確保を図るべきではないか・
○連携確保に当たっては、患者の主治医が中心となるべきではないか。また、保健師によるコーディネイト機能を強化すべきではないか
C患者家族のケアを支援する機器の開発
○たんの自動吸引機等患者家族のケアを支援する機器の開発を進めるべきではないか
D家族の休息(レスパイト)の確保
○家族に必要な休息(レスパイト)を確保し、患者の在宅療養サービスの質を高めるための施策(レスパイト・ケア)を充実させる必要があるのではないか。
(2)入院サービスと在宅サービスの的確な組合せ
@入院サービスから在宅サービスヘの適切な移行支援
○患者の病状や患者のケア体制を踏まえつつ退院時指導を適切に実施するため、退院時指導の基本的なルール作りが必要ではないか。
A緊急時等の入院サービスの確保
○ 患者の病態急変等などに対応するため、入院施設の確保が必要ではないか。
2.「たんの吸引」行為について
(1)安全な実施のための基準作り
@適切な排たん法の実施の必要性
○ 専門的排たん法(体位排疫法、呼吸介助法(スクィージング)、軽打法、振動法など)を普及させる必要があるのではないか。
A危険性に応じた適切な対応の必要性
○ 日常的なたんの吸引については、行為の危険性に応じた適切な対応(プロ'トコル)を示すことが必要ではないか。
(2)家族以外の非医療職による実施
○ 家族以外の非医療職による吸引の実施について
・ 看護等の資源の中で患者のケアが十分提供できれば、非医療職が吸引を行わなくてもよいのではないか。しかしながら、在宅療養の現状にかんがみ、家族以外の非医療職によるたんの吸引についても一定の条件の下で認めることも必要なのではないか。その際、医療サービスを受ける機会が閉ざされることのないようにすべきではないか。
・ 「たんの吸引」の危険性にかんがみ、非医療職による吸引の実施は、認めるべきではないのではないか。
○ 非医療職が行う行為と、家族が行う行為との関係について法律的な整理が 必要ではないか。
○ 家族以外の非医療職によるたんの吸弓1を認める場合であっても、訪問看護等の専門的ケアの充実に努めるべきではないか。
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資料4↓ |
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ALS患者と家族の在宅療養を支援するために
(社)日本看護協会 山崎摩耶
1.家族の介護力を前提としないでもすむような在宅療養の体制づくりと財源配分を
○ これまでの分科におけるさまざまな議論でもでてきたように・家族の介護カを期待した退院指導や退院時の地域連携に始まり・実際のケアにおいても家族の介護力を前提としている今の在宅医療の意識やあり方を早急に改善していくことが重要と考える。
2. 現行の施策を十分利用するための周知・徹底
○「在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪間看護治療研究琴業」を周知する とともに、患者1人当たり年間260回の活用を促進する。
○利用可能な地方公共団体の事業、サービスメニューの惰報提供を進める
○保健所、医療機関、訪間看護ステーション・かかりつけ医の連携や・地域 の難病ネットワーク、チームケア体制を徹底する
3.現行の運用変更(規制緩和)などですぐにでも改善できること
○.24時間の巡回訪間が実施できるように、同一日に1人の利用者に対し複数回の訪間看護を、複数の訪問看護ステーションから訪岡できるように要件'を緩和する。
○訪閲看護ステーションの訪問看護計画のもとに、看護師の指導を受けて訪問介護が協働できるしくみを作るなど、看護と介護の連携の強化・充実を図る。
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資料5↓ |
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平成/5年4月4日
厚生労働大臣 坂ロ カ 殿
医政局長 篠崎英夫 殿
分科会委員 各 位
日本ALS協会会長 松本 茂
ヘルパー等による疫の吸引実現を求める連絡会
日本ALS協会吸引問題解決促進委員会委員長橋本みさお
日本筋ジストロフィー協会理事長河端静子
人工呼吸器をつけた子の親の会会長大塚孝司
SMA(脊髄性節萎縮症)家族の会事務局長比企弘治
SSPE青空の会事務局長中村 一
厚生労働台医政局設置
「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」
ヘルパー等介護者による痰の吸引検討に関する意見・要望書
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この度は私達の要望に対し、2月3日より3月26日まで5回に渉り、鋭意ご検討いただいてきたことに心より感謝申し上げます。
さて、私達は「桜の宿の咲くころまでに決着を」という昨年11月の坂口大臣の答弁に大きな期待を抱き、分科会の成り行きを注視してきました。しかし、この間の経過をみますと訪問看護の拡充議論に中心がおかれ、いまだに私達が大臣に要望した「ヘルパー等介護者による疫の吸引実施」について踏み込んだ検討がなされていないことに、憂慮を禁じえません。
検討が分科会のタイトルに示されているような限定された枠組み内でとどまることは、はなはだ遺憾です。分科会では「在宅ALS患者に的を絞って検討し、・他への応用は後で」として扱われていますが、私達の要望は「ALS等の吸引を必要とする患者に医師の指導を受けたヘルパー等介護者が日常生活の場で吸引を行うことを認めてください」(11月12日、大臣提出要望書)に示した通りであり、∫吸引を必要とする患者に・ヘルパー等介護者が、日常生活の場での吸引を行う」ことが最終的なまとめに盛り込まれるよう、改めて要望致します。
検討の中で看護職委員より「吸引は難易度が高く危険。訪問看護師の拡充による解決の検討をしないで、ヘルパーによる吸引検討は拙速である」との見解がありますが関係する主治医が属する日本神経学会からは「適切な指導を受けておれば特例療養者を除き、特別の医学知識・技術がない非医療関係者でも安全にできる」「在宅療養者の看護に際し、適切な指導をうけたホームヘルパーは、担当する療養者に限り吸引できる」との見解が示されております。また、私達の要望書は医師・看護師の指導を受けた家族および家族と同等とみなされるヘルパー等介護者が長い間、安全に吸引を実施してきた多くの経験例に裏付けられたものであります。
すでに東京では桜は満開です、いよいよ介護保険が見直され、支援費制度もスタートしましたが、「ヘルパーの吸引は不可」との説明がなされているところもあり、患者・家族は吸引をしてくれる介護事業所・介護人の確保にますます必死の努カを強いられております。
分科会において、すみやかに「ヘルパー等介護者による疲の吸引」が重点的に検討されて、全国の患者・家族の期待に叶う有効な施策が一日も早く提言されることを切に要望致します。 以上
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