最終回
ヘルパー吸引問題検討委員会レポート
(第8回)(5月13日18:00〜20:00時厚労省9階省議室)

終了後の記者会見

多彩な報道陣

最後の委員会

厚労省担当事務官
                      
                     最終回傍聴記


 桜ならぬサツキが満開の五月、検討委員会は最終回を迎えました。
 内容は一言で言えば前回の修正です。第7回委員会で提案された「これまでの議論の取りまとめ」を前回の議論を踏まえて修正を加え、それが当分科会の報告書(案)として資料提出され更に修正検討されました。従って骨子は同じで「医師または看護師が行うべきものだが、家族負担があまりに大きい現状に鑑み、家族以外の吸引も一定の条件下でやむをえない」という見解での下での提言です。文言についての様々な論議はありましたが基本的には大きな修正はなかったと感じます。他疾患については「新たな検討会を作るまでもなく基本ができたのだから厚労省判断で対応して欲しい」という意見が複数委員から出ていました。即時ALSと同様の対応をして頂きたいと思いました。
 終わってから記者会見を行い、JALSAとしての見解他団体の見解発表がありました。
 これには各方面様々な反応がありました。
 闇に光が見えた、という声、振り出しに戻った、という声、他疾患はどうしてくれるという声。
 難産の末にようやく生み出された今回の提言を、どう活かし育てていくかが今後の問題と思います。ヘルパー吸引を求めたのに何故「新たな看護を考える委員会」の分科会などというところに位置付けられたのか、出発点が難産の原因であったように思えてなりません。今後もALS協会は他団体との連携の下頑張っていくしかないでしょう。厚労省、役人官僚の世界は優秀だけど現場と乖離してるなぁ、当事者不在の検討会だったなぁ、というのが率直なまとめの感想です。ま、一歩踏み出したんだからこれからも皆さんで頑張りましょう! 委員の方々も関係者もご苦労様でした。

                                               (新潟県支部:若林)
資料
          看護師等によるA L S患者の在宅療養支援
                 に関する分科会(第8回)

                    資 料 目 次

  資料 「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」報告書(案)

「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」報告書()   

1.はじめに                                         
  ○ ALS患者のたんの吸引については、当該行為が患者の身体に及ぽす危険
  性にかんがみ、原則として、医師又は看護職員が行うべきものとされてきた
  ○ 在宅ALS患者にとっては、頻繁にたんの吸引が必要であることから、家
   族が24時間体制で介護を行っているなど、患者・家族の負担が非常に大き 
  くなっており、その負担の軽減を図ることが求められている。                 
  ○ このような現状にかんがみ、在宅ALS患者に対するたんの吸引行為につ
   いての患者・家族の負担の軽減を図るための方策について検討するため、平
   成1523目に当分科会が設置された。                                         
  ○ 当分科会においては、ALS患者、家族、看護職員、ホームヘルパー等の
  関係者からヒヤリングを行うなど、在宅ALS患者の療養生活の質の向上を
  図るための看護師等の役割及びALS患者に対する痰の吸引行為の医学
  的・法律学的整理について、●回にわたって検討してきたところである。
  ○ 今般、当分科会として、これまでの議論を整理し、本報告書をとまとめ
  たので、これ を公表するものである。

                           

 
2.在宅ALS患者の療養環境の向上を図るための措置について
 (1) 在宅療養サービスの充実
  @ 施策の総合的な推進
   ○ ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、筋萎縮と筋力低下が特徴的な疾患であ
     り、徐々に全身に拡がり、歩行困難になるほか、言語障害、嚥下障害、呼吸障害
    に及ぶものであり、病気の進行により、コミュニケーションも阻害され、ベッド
    上の生活を強いられる患者の苦悩は計り知れない。
   ○ 患者は長期にわたる療養を余儀なくされている状況にあり、人工呼吸器を装
    着しながら在宅で療養している患者にとっては、頻繁にたんの吸引が必要なこと
    もあり、患者及び患者を介護する家族にとっての負担は大きい。
   ○ こうした現状を踏まえ、患者のQOLの向上や患者及び家族の負担の軽減を
    図るため、在宅ALS患者の療養環境の更なる向上が求められており、患者が家
    族の介護のみに依存しなくても、円滑な在宅療養生活を送ることができるよう、
    以下のような施策を総合的に推進していく必要がある。
  A 訪問看護サービスの充実と質の向上
   ○ 在宅ALS患者の療養生活を支援するためには、訪問看護サービスが十分
    に提供されることが重要であり、引き続き訪問看護サービスの充実を図っていく
    ことが求められる。
   ○ また、在宅ALS患者が必要なときに適切な訪問看護サービスを受けるこ
    とができるようにするためには、診療報酬で定められた回数を超える訪問看護の
    費用を補助している「在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業」
    を積極的に活用するよう、実施主体である都道府県に対して事業の周知徹底を図
    り、その取組を促進していく必要がある。
   ○ さらに、24時間の巡回型訪問看護の実施に向けては、同一日に、一人の利
    用者に対し、複数の訪問看護事業所(訪問看護を実施する医療機関及び訪問看護
    ステーションをいう。以下同じ。)から複数回の訪問看護を行えるようにする必
    要があることから診療報酬上の要件について検討することが望まれる。
   ○ 訪問看護の質の確保については、訪問看護師に対する研修や潜在看護師に対
    する研修等訪問看護サービスを担うべき看護職員の質を高めるための施策を講ず
    るべきである。
  B 医療サービスと福祉サービスの適切な連携確保
   ○ ALS患者の在宅療養の支援に関しては、医療機関、訪問看護事業所、訪問
    介護事業所などのサービス提供機関、あるいは、都道府県等の保健所や市区町村
    の担当部局など、医療や福祉などの関係機関が多岐にわたっているが、各種サー
    ビスの患者への提供についての総合的な連携・調整が十分とは言えない状況にあ
    ることから、各機関が相互の連携を適切に図り、地域でのチームケア体制を確立
    していくことが求められている。このため、国及び地方公共団体において、引き
    続き、各機関の連携体制や地域のチームケア体制の確立を支援するための施策を
    講ずるべきである。
   ○  医学的な管理が必要である在宅ALS患者については、チームケア体
    制において、主治医(入院先の医師や在宅のかかりつけ医)が中心となるべきで
    ある。また、患者の退院時指導に際しては、医療や福祉の関係者を参加させるな
    ど、入院期間中から地域でのチームケア体制の確立を図るべきである。なお、在
    宅ALS患者の主治医に対しては、ALSに関する情報提供が行われることが必
    要である。また、国及び地方公共団体において、「特定疾患医療従事者研修」や
    「難病患者等ホームヘルパー養成研修事業」など、医療や福祉の関係者の研修を
    引き続き適切に実施する必要がある。
   ○ また、介護保険制度の導入に伴い、保健所保健師等の難病患者への関わりが
    弱まったという指摘もあるが、在宅ALS患者を支援するチームケア体制の確立
    の上で、医療のニーズが高い患者にとって、各種サービスが最適な組み合わせと
    なるようにするためには、保健所保健師等が担うべき総合的な調整機能は極めて
    重要であり、今後とも当該機能の充実強化を図るべきである。
   ○ なお、平成15年度から開始される難病相談・支援センター事業を推進す
    るなど、ALS患者や家族に対する相談・支援などを充実させる必要がある。
  C 在宅療養を支援する機器の開発
   ○ たんの自動吸引装置等在宅療養を支援する機器の開発・普及の促進は、患者
    及び家族の負担の軽減に資するものであることから、引き続き機器の研究開発及
    び普及の促進を図るための措置を講じるべきである。
  D 家族の休息(レスパイト)の確保
   ○ 家族に必要な休息(レスパイト)を確保し、在宅ALS患者の療養環境の向
    上を図るため、今後とも、ホームヘルプサービス事業、ショートステイやデイ
    サービス事業などの各種の施策の充実を図っていく必要がある。
   ○ なお、都道府県や市町村において、独自に先進的な事業に取り組んでいると
    ころもあり、これらの施策が有効に活用され、また、各地における取組の参考と
    なるように、各種施策の情報提供や周知に努めるべきである。

 (2) 入院と在宅療養の的確な組合せ
  @ 入院から在宅への円滑な移行
   ○ 在宅への移行の判断は、医師の判断に基づくものであるが、患者の病状や患
    者の療養環境も踏まえた、適切な退院時指導の実施を促進するため、退院時指導
    の基本的なルール作りが必要である。
  A 緊急時等の入院施設の確保
   ○ 患者の病態急変などに対応するため、引き続き入院施設を確保するための施
    策の推進が必要である。

3.たんの吸引行為について
 (1) たんの吸引の安全な実施
  @ 専門的排たん法の普及
   ○ 専門的排たん法(体位排たん法、呼吸介助法(スクィージング)、軽打法、
    振動法など)が適切に実施されれば、たんの吸引の回数を減少させることができ
    ることから、たんの吸引に伴う患者及び家族の負担の軽減を図るためにも、専門
    的排たん法の普及促進に努める必要がある。
  A 日常的なたんの吸引に関する適切な対応
   ○ 日常的なたんの吸引については、行為の危険性に応じた適切な対応(プロト
    コル)を示すことが必要である。

 (2) 家族以外の者によるたんの吸引について
   ○ たんの吸引は、その危険性を考慮すれば、医師又は看護職員が行うことが原
    則であり、ALS患者に対する家族以外の者(医師及び看護職員を除く。以下
    「家族以外の者」という。)によるたんの吸引については、医師及び看護職員に
    より十分にサービスが提供されるならば、実施する必要はないと考えられる。
   ○ しかしながら、たんの吸引は頻繁に行う必要があることから、大部分の在宅
    ALS患者において、医師や看護職員によるたんの吸引に加えて、家族が行って
    いるのが現状であり、家族の負担軽減が求められている。このような在宅療養の
    現状にかんがみれば、家族以外の者によるたんの吸引の実施についても、一定の
    条件の下では、当面の措置として行うこともやむを得ないものと考えられる。こ
    の場合においても、医療サービスを受ける機会が閉ざされることのないよう、医
    師及び看護職員が積極的に関わっていくべきである。
   ○ なお、この取扱いについては、訪問看護サービスの更なる充実やたんの自動
    吸引装置の開発・普及の進展等、今後における在宅療養環境の変化に応じて、適
    宜・適切に見直すことが必要であり、まずは3年後に今回の措置の実施状況や在
    宅ALS患者を取り巻く療養環境の整備状況等について確認すべきである。
   ○ また、今回の措置は在宅ALS患者の療養環境の現状にかんがみ、当面やむ
    を得ない措置として実施するものであって、ホームヘルパー業務として位置付け
    られるものではないが、医療と福祉の関係、それぞれの役割分担も含めて、在宅
    医療に携わる者の行う業務や在宅医療そのものの在り方についての議論が必要で
    あるという意見もあり、これについては、今後検討すべき課題であると考える。
   ○ 以下は、家族以外の者が患者に対してたんの吸引を行う場合の条件を示した
    ものである。
  @)療養環境の管理
   ○ 入院先の医師は、患者の病状等を把握し、退院が可能かどうかについて総合
    的に判断を行う。
   ○ 入院先の医師及び看護職員は、患者が入院から在宅に移行する前に、当該患
    者について、家族や在宅のかかりつけ医、看護職員、保健所保健師、家族以外の
    者等患者の在宅療養に関わる者の役割や連携体制などの状況を把握・確認する。
   ○ 入院先の医師は、患者や家族に対して、在宅に移行することについて、事前
    に説明を適切に行い、患者の理解を得る。
   ○ 入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員は、患者の在宅への移行に
    備え、医療機器・衛生材料等必要な準備を関係者の連携の下に行う。医療機器・
    衛生材料等については、患者の状態に合わせ、入院先の医師や在宅のかかりつけ
    医が必要かつ十分に患者に提供することが必要である。
   ○ 家族、入院先の医師、在宅のかかりつけ医、看護職員、保健所保健師、家族
    以外の者等患者の在宅療養に関わる者は、患者が在宅に移行した後も、相互に密
    接な連携を確保する。
  A)在宅患者の適切な医学的管理
   ○ 入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員は、当該患者について、定
    期的な診療や訪問看護を行い、適切な医学的管理を行う。
  B)家族以外の者に対する教育
   ○ 入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員は、家族以外の者に対し
    て、ALSやたんの吸引に関する必要な知識を習得させるとともに、当該患者に
    ついてのたんの吸引方法についての指導を行う。
  C)患者との関係
   ○ 患者は、必要な知識及びたんの吸引の方法を習得した家族以外の者に対して
    たんの吸引について依頼するとともに、当該家族以外の者が自己のたんの吸引を
    実施することについて、文書により同意する。
  D)医師及び看護職員との連携による適正なたんの吸引の実施
    (注:別紙参照)
   ○ 適切な医学的管理の下で、当該患者に対して適切な訪問看護体制がとられて
    いることを原則とし、当該家族以外の者は、入院先の医師や在宅のかかりつけ医
    及び看護職員の指導の下で、家族、入院先の医師、在宅のかかりつけ医及び看護
    職員との連携を密にして、適正なたんの吸引を実施する。
   ○ この場合において、気管カニューレ下端より肺側の気管内吸引については、
    迷走神経そうを刺激することにより、呼吸停止や心停止を引き起こす可能性があ
    るなど、危険性が高いことから、家族以外の者が行うたんの吸引の範囲は、口鼻
    腔内吸引及び気管カニューレ内部までの気管内吸引を限度とする。
   ○ 入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員は、定期的に、当該家族以
    外の者がたんの吸引を適正に行うことができていることを確認する。
  E)緊急時の連絡・支援体制の確保
   ○ 家族、入院先の医師、在宅のかかりつけ医、看護職員、保健所保健師及び家
    族以外の者等の間で、緊急時の連絡・支援体制を確保する。

4.おわりに
  ○ 本検討会では、在宅ALS患者の在宅療餐環境の向上を図るとともに、患
   者及び家族の負担を軽減する観点から二必要暦措置について検討を重ねてき
   た。                
  ○ これらの措置が有効に機能するためには、在宅AL S患者の療養生活を支援
   する関係者が一体となって取り組むことが不可欠であり、国及び地方公共団
   体を始め、関係者の更なる努カを期待するとともに、これらの措置を通じて、
   患斉及び家族の療養環境が向上していくことが望まれる。