ヘルパー吸引問題検討委員会
(第4回)レポート
縦に長〜いレポートです
         *
                         
                          傍 聴 記

 第4回「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」が、3月10日午後5〜7時
、厚労省9階省議室で開かれました。 
 今回は分厚い資料集の説明とそれに関する質疑応答という形で進行しました。まず厚労省医事
課の名越・三浦補佐官が資料1〜5(下段資料目次参照)を説明し質疑応答を受けました。
 資料1では在宅ALS患者への様々な施策を説明し、更に平成15年度から「難病相談支援セン
ター」の設置に取り組むことが明らかにされました。
 資料2で2病院(大阪府立病院・国府台病院)における退院時指導マニュアルの紹介もありまし
た。
 資料3「訪問看護ST.関連施策について」では、「STが増えているのに何故必要患者をカバー
できないか」という鋭い質問もありました。「分析してないので分からない」そうです。
 資料4はJALSA金沢委員が纏めた患者実態調査書で4割近くのかたが医療職以外の介護人
に吸引を依頼している実態が明らかになっています。ようやくこの度4回目で資料と
して認められました。
 資料5「在宅療養対策の事例」では医師会が関与してヘルパー吸引を実施している尾道市の
例が紹介され、その後伊藤委員が宮城等の事例を説明しました。両例は大変具体性があり今後
の参考になると思われます。
 最後に看護協会の山崎委員が資料6で看護協会独自の調査によるデータをあげつつ「訪問看
護の強化拡充、及び看護と介護の連携区分けの明確化の必要性」を述べられました。この資料
の中には先日看護協会が行った緊急調査の結果速報も含まれています。
 前回より具体性のある資料を得たおかげで討議も内容のあるものとなりました。看護側は訪問
看護の充実先決が基本路線ですが、委員会としては「様々な施策が立てられるのに何故実施さ
れないかその原因を探って欲しい」という最後の星委員の指摘にみられるように現実的な解決策
を求める機運になってきたように感じます。次回には大方の方向性を掴みたいという座長発言で
締めくくられました。
 傍聴席には呼吸器の患者さん4名を始めこれまでになく沢山の患者家族の方々が傍聴におい
でになり熱気がありました。3月5日の「吸引を必要とする関係者交流会」で多くの患者さん方に
呼びかけた成果かと思われます。終了後も一階ロビーに集まり30分ほどミーティングをしました。
尤も、今までの緩慢さを知っている者には進展が感じられましたが、始めての特に今回対象外の
他疾患患者家族には「この進行具合では結論が出るのを待っていられない。既成事実を作って
いくしかない」など焦燥感が感じられました。
 討議内容の報告については今回は東京都支部事務局長の金沢さんがいち早く詳細なレポート
を書いて下さいましたので、それを紹介させて頂きます。ALS協会も金沢さんを始め一生懸命取り
組んでおります。どうぞ皆様の活発な意見表明を各所でお願い致します。そうして世論を盛り上げ
ていくことが今後の良い展開につながることと思います。(若林)
                                                                  
  資料と金沢レポート         *

看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会(4)
資 料 目 次

 資料1 在宅ALS患者対策について
     ○ ALS患者を支援する事業(平成15年度〜)
     ○ ALS患者に対する主な施策
     ○ 在宅ALS患者に対する訪間看護について
     ○ 在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪間看護治療研究事業の実施状況

 資料2 ALS患者・家族に対する退院時指導の事例
     ○ 大阪府立病院「在宅人工呼吸器療法(気管切開、胃ろう)に向けた入院
        診療マニュアル」
     ○ 国立精神・神経センター国府台病院「吸引について」

 資料3 訪問看護ステーション関連施策について
     ○ 訪問看護実施施設数の年次推移
     ○ ALS患者数・訪間看護実施施設数
     ○ 訪問看護ステーショ.ンの整備促進に関する施策

 資料4 ALS患者に関する調査報告
      「吸引等に関するALS患者・家族の実態と意見」(平成152月、日
         ALS協会)
     ○ ALS患者の在宅サービスの利用状況からみる間題点と今後の課題」
        (平成14年度厚生労働科学研究費補助金(特定疾患対策研究事業)分担
        研究報告書、分担研究者豊浦保子)
     ○ 「人工呼吸器装着等医療依存度の高い長期療養者への24'時間在宅支援
        システムに関するアンケート調査」結果

 資料5 在宅療養対策の事例
     ○ 尾道市における取組
     ○ 宮城県等における取組(伊藤委員提出資料)

 資料6 山崎委員提出資料
     ○ ALS患者等の在宅療養を支援するために、訪問看護の充実等の必要な
        施策について
     ○ 宮城県における訪問看護ステーションの取り組み
     ○ ALS患者等への吸引に関する緊急調査(速報)

   金沢レポート  
 各位
  日本ALS協会の金沢です。本日10日夜5時〜7時、厚労省会議室で第4回「看護師等による  ALS患者の在宅療養支援に関する分科会」が開催されました。傍聴席でよく聞き取れなかったこ
ともあり、正確でない面がありますが、とりあえず速報として報告します。(正式には厚生労働省か
 らの発表を参照ください)
  積極なご意見を寄せていただけるよう期待しています。

 1.第4回分科会の概要
    議事「在宅ALS患者対策の現状と課題について」ということで、事前に分科会委員に配布さ
    れた資料(当日傍聴者配布)の説明が関係者より行われ資料に対する質疑討論された。

    資料1.「在宅ALS患者対策について」は疾病対策課より、おさらいということで
        「ALS患者を支援する事業(平成15年〜)」について説明。新しい情報として
        @平成15年度から3年で難病相談・支援センター(仮称)を都道府県で整備 
             し、患者会支援、ボランテアの育成を図ること。
        A診療報酬外年260回使用できる「在宅人口呼吸器使用特定疾患患者訪問看護」
          は平成13年度で25県で88名が年平均98回使用されている。
        (質疑)
          Q1:年260回利用可能訪問看護が利用されていない理由は?
          A1:申請して応じられないこはない(疾病対策課)
          Q.2:鹿児島県は必要ないのか?
          A2:.県の財政事情と聞いている。
          Q3.宮城県の利用が少ない理由は予算事情?
          A3:財政事情ではない。
     資料2.「ALS患者・家族に対する退院時指導の事例」として医事課より大阪府立病院の
          「在宅人工呼吸器療法に向けた入院診療マニュユアル」と国立精神・神経センター
          の「吸引について」「退院時指導チェックリスト」等の説明。
         (質疑)
          Q1:.病院退院時のチェックリストはスタンダードか?
          A1:.全国ではそうでない 

     資料3..医事課より「訪問看護ステーション関連施策について」
          (訪問看護実施施設の年次推移、訪問看護ステーションの整備促進に関する施策
          :平成13年度実績4,825箇所、平成14年度予算7,100箇所、平成15年度
           予算8,100箇所。
           ALS患者数・訪問看護実施施設数:全国ALS患者数6180名に対し、
             訪問看護S,4730箇所、病院3056、診療所10672箇所)
          (質疑)
           Q1:平成12年度に訪問看護施設で病院、診療所が減っている理由は?
              訪看が増えているのにカバーできていない理由は?
                    A1:.よく分析できていないので後日報告したい。

      資料4.医事課より「ALS患者に関する調査報告」として日本ALS協会提出
           「吸引等に関する患者・家族の実態と意見」(アンケート調査:吸引依頼先で
           37% の患者が医療資格のない介護人に依頼していること。
           吸引実施患者の訪問看護利用状況は週1〜3回が60%、週7回以上3%。
           痰の吸引と訪問看護に関する自由記載意見の紹介)と
           近畿ブロックの豊浦氏の「ALS患者の在宅サービスの利用状況からみる問題点
           と今後の課題」(平成14年度厚生労働省補助金研究:アンケートの内、吸引器
           使用者63%、1日の平均吸引回数21回、吸引は家族、医療従事者以外で
           ヘルパーが22%、全身性障害者介護人、約10%。)の説明がされた。
          (質疑)
           Q1:吸引をしている患者さんにとって介護保険のケアプラン上で吸引はどういう
              位置づけ運用になっているのか。医療保険と介護保険の使い分けは?
           A1−1:.なにを使えば吸引問題が効率的に改善されるのか分析はされて
                 いない。(医事課)
           A1−2:協会のアンケートの資料で分かりやすいが「訪問看護の回数が制限
                 されており、介護の方が吸引できるところを探せば引き受けてくれる
                 事業者が少ないためケアプランにのせられない。介護人の確保に大変
                 な苦労をしている」ことが指摘されていると思う。
           Q2:患者・家族は訪問看護ステーションが引き受けてくれるところがあれば問題
              はかなり解決すると考えてよいのか。?
           A2:医療依存度の高い患者さんは、何回でもきて欲しいがそれは無理があり
              できていない。介護保険でのヘルパーは吸引ができない。それでやむなく
              家族は介護負担を減らすために私費で介護人を雇い負担になっている。
   
       更に最終報告書ではないが(財)日本訪問看護振興財団が平成15年1~2月に行った
       「人工呼吸器装着等医療依存度の高い長期療養者への24時間在宅支援システムに
        関するアンケート調査」結果の報告がされた。
         (回答訪問看護st、896.日中の長時間型訪問看護サービス利用者ニーズが39%
          と高く、レスパイト入院27.5%、夜間長時間滞在13.4%、2002年12月夜間
          訪問実施施設約10%で1〜2回が89%。呼吸器装着の利用者がいる所は31%)

       資料5.「在宅療養対策の事例」として、「尾道市における取組み」、と伊藤委員より
            「宮城県における取組み」(仙台市訪問ヘルパーステーションB重症患者サービス
            内訳、ALS在宅療養患者)、「N市におけるナースボランテア講座内容」(医
             療職以外の関わり事例)等が説明された。
           (質疑)
            Q1:指名制介護人以外の人も含んでいるのか? 
            A1:先輩と一緒にいって行っている。この事業所は技術に習熟したベテランが
               多い。
            Q2:事業所の収入は?
            A2:持ち出しがある。
            Q3:夜間は?
            A3:夜間手当はない。
            Q4:訪問看護が少ない理由は?
            A4:たまたまこの事業所は訪問看護ステーションをもっており、医療度の高い
               時に実施し、質の高い医療を看護師に提供してもらっているとのこと。

        資料6.山崎委員(看護協会)より以下の資料説明がされた。
            @「ALS患者等の在宅療養を支援するために訪問看護の充実等の必要な施
              策について」
              1.訪問看護の充実(看護と介護の連携の強化・充実を図る。他)、
              2.難病対策(在宅人工呼吸器使用患者の年260回の限度拡大、他)、
              3.医療・福祉の連携
            A「宮城県における訪問看護ステーションの取組み」 
            B「ALS患者等への吸引に関する緊急調査(速報)」(1月30日〜2月14日
              メール:86件、2月3日〜7日電話:158件)
             ・家族介護に依存した在宅療養の問題、特にALSやそれら以外の家族から
               の切実な要望が多かった。
             ・ヘルパーの吸引に関しては賛否両論の意見が寄せられた。主に家族の
              立場からは賛成意見が多く、看護職など専門職からは条件付賛成、反対
              意見があった。介護職からは慎重意見もあり、なかには理学療法士から
              吸引を認めて欲しいとの意見もあった。
            (調査票による訪問看護ステーション、病院、、保健所、都道府県)
              1.「都道府県別ALS患者の人数の内訳
                (保健所470、ALS患者3886、在宅呼吸器患者583名)
                (需給マッピングができる)
              2.ALS患者を支援する際の課題
                (ステーション、保健所、病院とも介護者の負担・健康問題が第一)
              3.「患者や家族が安心して在宅ケアを受けるために必要なこと」
               (訪問看護の時間延長、夜間滞在訪問看護が第一。介護職による医療
                 行為など業務の見直し回答がステーションで44%、保健所で52%、
                 病院で58%。)
 
             ・看護と介護がどのようにリンクされてサービス提供するのか、介護保険で曖
              昧にスタートした。結果的に患者・家族が十分なサービスを受けられないこ
              とになっている。
             ・看護と介護の連携、区分けが必要
             ・日中レスパイトが求められている(ナイト、デイが手薄)
              ・複合的に考えないと訪問看護のみではなかなか難しい

    全体をとおしての他の委員の意見
   ・介護保険と医療保険が連携していない。
   ・尾道での事例は吸引の指導教育やケアプランについても主治医がしっかり関与しており、
    医療と介護の橋渡しができている。宮城の事例もいずれも医療側が吸引に対して育成に
    タッチしており、よい参考となる。

    最後に前田座長より、これまでややグルグル螺旋的に回ってきたようにみえるが、患者・
   家族の意向や看護の方の考えもより一歩理解でき、決して遠回りではなかった。これまで
   の共通認識として、訪問看護の拡充には誰も異存はないと思う。ただこれだけで与えられた
   テーマに応えられているのか。
    次回、在宅ALS患者の療養支援体制をどうするのが望ましいのかの議論を踏まえて現実
   にある資源、その範囲でなにができるか、法的な点をいじらなければなければならないのか
   どうかを検討したいとの提起がされた。

    医事課より  次回は3月26日(水) 10時〜12時 厚生労働省18階22会議室
       で開催予定との連絡があった。

   *傍聴にはALS協会吸引問題解決促進委員会委員長の橋本みさおさんをはじめ、
     呼吸器をつけた都内の3名の患者さんや、ご家族が参加され、また、人工呼吸器をつけ
     た子の親の会代表(大塚氏)、日本筋ジス協会代表(川端氏)、その他関係者(ALS協会
      熊本事務局長他)がたくさん参加されました。
     関係者で会議終了後、傍聴しての感想と今後に対する意見交流をおこないました。

                                                   金沢 公明